一人暮らしを始めて数年、仕事の忙しさを言い訳に、私のワンルームは少しずつ汚れていきました。最初は床に服が脱ぎ捨ててある程度だったのが、いつしかコンビニの袋やペットボトルが転がり、週末にまとめて片付ければいいや、という気持ちが常態化していました。その日、悪夢は始まりました。深夜、ベッドでスマートフォンをいじっていると、視界の端を黒い影が高速で横切ったのです。ゴキブリでした。悲鳴を上げて飛び起き、夢中でスリッパを手にしましたが、素早い奴はあっという間にゴミの山の奥へと消えていきました。その夜は、一睡もできませんでした。部屋のどこかに奴が潜んでいる。もしかしたら、一匹だけではないかもしれない。そう思うと、体のあちこちが痒いような気がして、電気を消すことができませんでした。それからというもの、私の生活は恐怖とストレスに支配されました。家に帰るのが怖く、部屋のドアを開けるたびに心臓が跳ね上がる。食事をしていても、物音がするたびにビクッと体を震わせる。市販の殺虫剤やゴキブリ捕獲器を買い込み、部屋中に撒き散らしましたが、効果は一時的でした。数日後には、また別の個体と遭遇する。時には、天井からポトッと落ちてくることさえありました。もう限界でした。友人にも相談できず、精神的に追い詰められた私は、インターネットで「ゴミ屋敷 害虫」と検索し、専門の片付け業者に相談の電話をしました。震える声で状況を説明する私に、電話口の担当者は優しく、そして冷静に対応してくれました。来てくれたスタッフの方は、私の惨状を一切責めることなく、黙々と作業を進めてくれました。そして、たった一日で、あの地獄のような部屋を、元のきれいな状態に戻してくれたのです。作業後、ゴミの中から大量のゴキブリの巣や卵が見つかったと聞き、改めて事の深刻さを思い知りました。きれいになった部屋で、何ヶ月ぶりかに安心して眠れたあの夜のことは、一生忘れません。あの恐怖は、二度と味わいたくない。この経験が、私がきれいな部屋を維持し続ける、何よりの原動力になっています。