放置されたゴミ屋敷は、ただそこにあるだけではありません。それは、時間の経過と共に、静かに、しかし確実に危険性を増していく「時限爆弾」のような存在です。問題を先延ばしにすればするほど、その爆発(=取り返しのつかない事態)が起きた時の被害は、甚大なものとなります。放置された時間と共に、どのようなリスクが増大していくのでしょうか。まず、ゴミの「量」と「質」が変化します。最初はただの散らかった部屋だったものが、時間が経つにつれてゴミが積み重なり、圧縮されていきます。下層の生ゴミは腐敗し、ヘドロ状になって強烈な悪臭を放ち始めます。これにより、ネズミやゴキブリ、ハエといった害虫が爆発的に繁殖し、不衛生な環境は加速度的に悪化していきます。次に、建物そのものへのダメージが深刻化します。ゴミの重みで床が歪み、湿気によって壁や柱が腐食していきます。放置された水回りはカビの温床となり、建物の構造材を蝕んでいきます。最初は簡単な清掃で済んだはずの問題が、数年放置されることで、大規模なリフォームや、最悪の場合は建て替えが必要になるほどのダメージへと発展してしまうのです。そして、社会的・法的なリスクも時間と共に増大します。最初は内々の問題だったものが、悪臭や害虫が近隣にまで影響を及ぼし始めると、ご近所トラブルへと発展します。行政からの指導や勧告を無視し続ければ、最終的には行政代執行といった、より強硬な措置が取られる可能性も高まります。何よりも、住んでいる本人の心身の状態が悪化していくことが最大のリスクです。不衛生な環境は身体の健康を損ない、社会からの孤立は心の健康を蝕みます。問題を放置するという行為は、解決の機会を先延ばしにしているのではなく、解決をより困難で、よりコストのかかるものへと、自ら作り変えているのに等しいのです。時限爆弾のタイマーは、今この瞬間も進んでいます。手遅れになる前に、その針を止める決断が必要です。